歯周病と糖尿病の密接な関係


この記事は2016年の2月に院内で配布されたリーフレット『フレッシュ通信 Vol.11:歯周病と糖尿病の密接な関係』のWeb版です。

今年は暖冬と言われていますが、ずいぶん寒くなり、冬らしくなってまいりました。
インフルエンザも流行しはじめているようです。
手洗い・うがいをし、栄養・睡眠をしっかりとってこの冬を健康な体でたのしく過ごしましょう♪

そもそもの歯(は)なし第9回:歯周病と糖尿病の密接な関係

1.歯周病と糖尿病の共通点

①自覚症状が出にくく、元に戻らない

まず、一度かかると元には戻らないという大きな特徴があります。
糖尿病も歯周病も、その進行は音もなく忍び寄り、気付いた時には「時、既に遅し」といった具合に重症化する病気です。
そしてどちらも完治は難しいゆえ、サイレントキラーと呼ばれています。

②家族性・遺伝的な要素に影響を受ける

1型糖尿病や特殊な急速進行性歯周炎、若年性歯周炎などは、遺伝や免疫学的な要因にも左右されます。
両疾患とも、発症年齢が40歳前後から増加傾向にあることや、家族歴がみられること、そして糖尿病患者(特に2型)には歯周病にも罹っている方が多くみられるなど、いくつも共通した特徴があります。

③生活環境・食習慣の影響を受ける

そして、もっとも大きな類似点は「食」を中心とする生活習慣に影響を受けることです。
「生活習慣」によって引き起こされる病気は、初期のうちはほとんど症状がみられませんが、体の中ではさまざまな臓器や器官、そして血管などが声なき悲鳴をあげています。
そのため、どちらの治療においても「食習慣」「ストレス」「喫煙」「睡眠」「生活環境」等の問題を探ることによってリスクを軽減し生活習慣を変えることが必要ですが、1人では難しいものです。
内科医と歯科医、さまざまな医療スタッフがチームでサポートし、一人ひとりに合わせた医療が必須です。

2.炎症を通してつながる2つの疾患

炎症を通して、歯周病と糖尿病がつながっているという事実はあまり知られていません。
歯周病と糖尿病で起きている慢性炎症は、炎症の時に体内で作られる物質(炎症性サイトカイン)の分泌を通じて、血糖値を下げるホルモンの働きを抑制し(インスリン抵抗性)、結果として血糖値を上昇させます。
歯周病治療により慢性炎症が改善すると、インスリン抵抗性の軽減により血糖値は改善するという報告が数多くあります。
「口腔は全身の病の入り口です」。
正しいプラークコントロールが、全身の重症感染症の予防につながります。

3.健康なお口が糖尿病治療をサポート!

「歯周病を治療してもらったら、ご飯がすごく美味しくなった」
「歯が良くなるとご飯や野菜、納豆のおいしさがわかるようになった」
「自然に痩せてきたし、不思議と体も動かしたくなった」
歯周病の治療は味覚の改善にもつながります。
味覚の回復は糖尿病治療に不可欠な食生活の改善を大いにサポートします。

4.糖尿病から守れるのは「未病」に対応できる歯科医院

糖尿病は、今や成人の4~5人に1人が発症する国民病です。
5年、10年の後には糖尿病の魔の手が迫ってくるかもしれません。
その手は子どもや若者にも及びつつあります。
妊婦さんに関しては、今や8人に1人が妊娠糖尿病の可能性があると言われています。
当院における歯周病治療、ブラッシング指導、食生活アドバイスが、糖尿病をはじめとする全身疾患の発症を未然に防ぐ、大切な第一歩となることを願います。
皆様、どうぞお体とお口の健診、メインテナンスを定期的な習慣になさってくださいね。



一覧へ